競技特性を考慮したリハビリ 野球選手の肉離れについて

カラダのこと 足(下肢)

野球選手の肉離れ

野球を観戦していると、選手が肉離れをして試合を欠場する というようなニュースを聞くことがあります。

肉離れが多いスポーツはサッカー、陸上ですが、じつは野球選手にも多い怪我です。

今回は野球選手で比較的多く起こる肉離れについて、解説してゆきます。

この記事を書いた人

長友 芳之(ナガトモヨシユキ)

柔道整復師・JSPOーAT

神奈川県横浜市鶴見区にある自身の接骨院【ながとも接骨院】にて活動中。

YOUTUBE、ブログで身体の情報を更新しています。

足は走塁中、腹斜筋は投球と打撃の際に肉離れする

まず、野球での肉離れですが、大きく分けて足の肉離れと腹筋の肉離れがあります。

腹筋の肉離れは、バッティングの際の利き手と逆側、投球の際の利き手側が多いです。

足の肉離れは基本的に走行中に起こることが多いです。全力でベースを駆け抜ける際や、塁間で急に戻ろうとしたステップ動作の際などに起こることが多い怪我です。

以下に各部位ごとの説明をします。

太もも

太ももの肉離れは、もも裏の筋肉(専門的にはハムストリングと呼びます)の肉離れが一番多く、次にもも内側の内転筋、その次にもも前の大腿四頭筋肉離れと続きます

走行中に急激な足の動きに筋肉の伸び縮みがついてゆかないような形になり起こります。

ふくらはぎ

ふくらはぎの部分の筋肉は大きく分けて二つあります。表面の腓腹筋(ひふくきん)と言う筋肉と、奥にあるヒラメ筋という筋肉です。どちらも痛める可能性があります。

野球に限らず、選手の年齢が上がると太ももよりふくらはぎの肉離れの数が多くなる傾向があります。

腹筋

バッティングによる腹筋周りの肉離れも多く報告されています。
ただこの報告はプロ野球選手を対象とした研究なので、学生年代やほかの競技レベルの野球選手に関してのデータはありません。

痛めるのは腹筋の中でも腹斜筋と呼ばれる筋肉ですが、細かくいうと腹斜筋には2つの筋肉(外腹斜筋と内腹斜筋)があり、どちらも痛める可能性があります。

腹斜筋は体をねじる動作で強く収縮します。
特にバッティング動作で、前の足をついて体を捻ってゆく際に前側の内腹斜筋をかなり強く使います。
また、フルスイングした後にカラダの勢いを止める局面では同じく前側の外腹斜筋を強く使います。こういった強く収縮する際に痛めると考えられます。

投球動作で痛めるときは右投げの場合右側の腹斜筋を痛める事が多いと言われています。

受傷したら

まずはRICE処置の原則に従って処置をするとよいです。

RICE処置とは、ケガの応急処置で行う行動指針です。肉離れの場合、特にアイシングと安静が大切です。怪我の応急処置 アイシングの仕方

※アイシングに関してはしない方が良いという意見もありますが、当院では従来通りの考えをもとにアイシングしております。

現場ではなるべく早くこのような処置を行います。その後、医療機関を受診してください。

スポーツ選手を多く診ている整形外科がベストですが、近くにない場合も多いと思います。その場合は近くの整形外科を受診しましょう。自己判断するよりも早く治る確率が高くなります。

近くに整形外科などもない場合は、整骨院・接骨院を受診するようにしましょう。

リハビリ方法

怪我の程度にもよりますが2日から1週間くらいは動かしただけで痛い時期です。

リハビリはとにかく段階的に行なう

どこの部位もそうですが、リハビリはとにかく段階的に行なってゆく必要があります。特に肉離れのリハビリはこの部分を意識しないとうまくいかないので、注意します。

以下にムストリング肉離れのリハビリ例を示します。

第一段階

急性期の痛みが落ち着いてきたら少しずつ動かし始めます。
と言ってもまだ競技の動きは早いのでまずは日常生活を問題なくできるまでを目標とします。

図の右側のようにかがんで下の物を取ろうとした際に、ハムストリングに伸びるストレスがかかります。受傷直後はこういった動きも極力控えるようにします。

歩く・日常生活動作

普通に歩く動作が痛いような段階ではまだ運動はしない方がよいです。

歩く際にハムストリングにストレスがかかるのは、①の着地のために足を前に出した瞬間と、②蹴りだしのために後ろに持ってゆく時です。

こういった部分で痛みがないかを確認します。

軽負荷の筋力トレーニング

この時期では筋トレと言うよりも、収縮して痛くないかの確認といった意味合いで行います。

うつぶせで膝を曲げたり伸ばしたりしたときの患部の感覚を確かめます。これで痛い時はまだ安静期間が必要です。

うつ伏せで膝を伸ばした状態で足全体をすこし持ち上げる動作も、ハムストリングに刺激が入ります。

痛かったら中止しましょう。

第二段階

日常生活動作で痛くなくなってきたら、すこしずつスポーツ動作を意識した動きを行います。

ジョギング ~ ランニング

いきなり走るのでなく、早歩き、ジョギング、軽めのランニング という具合に段階的に進めてゆきます。

距離も最初は100メートル 次に200メートル 大丈夫そうであれば少し伸ばして500メートル と言う具合に少しずつ伸ばしてゆくようにします。

各種トレーニング

機材を使ったステップトレーニングなどは行ない方によってはハムストリングにそこまで負担がかかりませんので、注意しながら行ってゆきます。

ラダーやマーカーコーンなどを使って、ゆっくりとした動作から行うとよいです。

注意点としては、膝を大きく曲げる動作は控えるようにします。スピードも抑えめから行います。

『痛い動きは無理して行わないというのがポイントになります。

競技特有の動作

投球動作やバッティングなどに関連した動作を行ってゆきます。

投球動作でしたら、まずは座った状態で行って→次に立って軽めに行い→次にカラダ全体を使って、という具合にこれも段階的に行ないます。

バッティングの動作なども軽めの動作確認から行ってゆきます。
いきなり本気でスイングしたり、投げたりしてはいけません。

筋トレは徐々に負荷をあげる

スポーツジムなどにある【レッグカール】と言うマシンを使える環境がある場合は利用します。

自重で行う場合は【ヒップリフト】というトレーニングを行います。

第三段階

さらに競技復帰へ向けてトレーニングを進めてゆきます

強めのランニング ~ ダッシュ

ここまで来たら少しずつランニングの強度を上げてゆきます。

これはあるサッカーチームの指標ですが、痛めていない方の足と比べて90%以上の筋力になるまで全力のダッシュはしない方がよいと言われています。

筋力が健側に比べ90%、などの細かい数値はしっかりした測定器具がないと計れませんが、簡単に計測するのであれば、上記のヒップリフトで片足ずつおこなって、堪えれる秒数などを計って計測することもできます。

ジャンプなど反発を使ったトレーニング

ボックスジャンプやハードルでのジャンプ系トレーニングなど、反発を使った高強度のトレーニングもスポーツ選手には必要ですので、徐々に行うようにします。

強度の強いトレーニングになりますので、しっかりと体が温めってから行うようにします。

徐々に練習・実践に復帰

徐々に実戦練習にも復帰しますが、まだ負傷した動作(主に全力でのベースランニング)は控えるようにします。

高強度の筋トレ

実践練習に復帰してゆくのに並行して、患部の筋力強化もつづけます。患部の筋肉だけに負荷がかからないように全身を使って動かすようなメニューを行ってゆきます。

前述のヒップリフトは、足の下にバランスディスクやバランスボールを置いたりして負荷量をあげてゆきます。

復帰 ~ その後

上記の様に段階的に進めて

  • 精神的な不安感がない
  • トレーニング時、トレーニング後の患部の痛みがない

事を確認したのち、受傷の原因となった動作をしっかり行えるかをチェックします。

※ハムストリングの場合はベースランニング中に痛めることが多いので、全力でのベースランニングを確認します。

それで問題がなければ、復帰します。

怪我の原因になった動作がしっかり行えるかどうかのチェックが大切

日ごろのセルフケア

復帰したあとも日ごろからセルフマッサージやストレッチの習慣をつけるとよいです。

入浴後などに、患部の硬さを確認するような意味合いで、すこしもみほぐすとよいです。(もみほぐしすぎに注意)

マッサージした後にストレッチすると、普段よりよく伸びますので、ストレッチに苦手意識がある方は特に行った方が良いです。

また、自分では問題ないと思っていても、第三者がさわって調べると、患部がカチコチに固まっていることがあります。

硬い事がすべて悪いわけではありませんが、普段の状態よりも極度に硬い状態は怪我を再発リスクが高くなります。

信頼できる接骨院や整骨院、整体などがある場合は定期的に通うことをお勧めいたします。

トレーニングは継続する

リハビリ中に行ったトレーニングは、時間を見つけて継続するようにします。

一時的に復帰できたとしても、患部の状態が完全に元通りになるにはもっと長い時間がかかることが多いので、『プレーできたから治った』と安直に考えず、引き続きトレーニングして、患部を強化するようにします。


いかがでしたでしょうか?

以下のリンクでは、野球以外のスポーツにも対応した形での流れを説明しています。ぜひご覧ください。

【ハムストリング肉離れ】リハビリ例 何度も繰り返す人必見
#ハムストリング #肉離れ #リハビリスポーツ選手によく起こる怪我の一つに『ハムストリングの肉離れ』があります。この動画では、受傷から復帰までの流れの例をご紹介しています。この動画内では主にトレーニング内容をご紹介していますが、並行してストレッチやマッサージ、電気治療なども行なってゆきます。注意点※動画内容はあ...

実際のリハビリの流れは、個々の症状によっても変わりますので、一概に上記の様に進められるわけではないと思いますが、基本的にはこういった流れ、考え方でリハビリをすすめてゆくとよいと思います。

なるべく専門家の指導の下行った方が好ましいですが、それが難しい場合は参考にしてみてください。

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それでは、最後までお読みいただきありがとうございました。

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