変形性膝関節症や各種スポーツでの膝の障害、ケガなど。膝の痛みを訴えられてご来院される方はかなり多いです。今回は膝の痛みに関わる神経について自分の勉強の意味合いも含めて記事でまとめてゆきます。

普段は一般の方向けに記事を書いていますが、今回は自分の勉強のまとめなので専門用語が多めです。ご了承ください。
この記事を書いた人
長友 芳之(ナガトモ ヨシユキ)
柔道整復師・JSPO-AT
神奈川県横浜市鶴見区『ながとも接骨院』にて活動中。
※施術者としての個人的見解も含んだ内容ですので、お読みになる際はご留意ください。
大腿神経由来の神経
大腿神経から分岐する膝関節枝
大腿神経と言うのは、腰から出た神経が体の前側でまとまり、股関節の前を通って大腿部の前面を支配する神経の名前になります。この大腿神経からいろいろな神経が分岐して、大腿部の筋肉を支配しますが、同時に膝関節の知覚を支配する知覚枝と言うものが存在しています。
文献によればこの神経は図のようにいくつかのパターンを持っていて、人によってその走行は変化が在るようです。
百合野大輝先生・三輪夏希先生の報告によると大腿神経から分岐する膝関節枝には4つのパターンがあったとのことです。

- 内転筋管を通過して膝蓋靭帯の内側に達する枝(水色:右から1本目)
- 内側広筋枝から分岐して膝蓋骨内側に達する枝(濃い青:右から2本目)
- 膝蓋骨筋枝から分岐して膝蓋上嚢に達する枝(緑:右から3本目)
- 外側広筋枝から分岐して膝蓋骨外側に達する枝(オレンジ:右から4本目)
参考文献
百合野大輝・三輪夏希
日本人遺体における股関節枝および
膝関節枝の分布状況に関する肉眼解剖学的研究
伏在神経
大腿神経から分岐する神経には皮枝である伏在神経もあります。前述の4つとは別のルートになります。

伏在神経は皮枝なので、知覚だけを支配しています。
伏在神経は途中内転筋管(ハンター管)という管を通ります。内転筋管の中もしくは内転筋管を出た後に分岐する膝蓋下肢は膝内側の知覚を支配しているとされます。伏在神経の本管はそのまま下腿部へ下り足部まで行きます。
この伏在神経から分岐して膝蓋骨下方へ向かう枝に関する文献もあります。
膝蓋下枝は,14側中5側では内転筋管内において分岐して広筋内転筋板を貫通し,9側では内転筋管を出た後に分岐していた.さらに,膝蓋下枝は,14側中12側では縫工筋を貫通し,2側では縫工筋の後側を迂回していた.縫工筋を貫通あるいは迂回する際に大きく走向を変えていた
とあり、内転筋管(ハンター管)や縫工筋による圧迫の影響を受けやすいことが推測されます。
参考文献
児玉 亮 2009
伏在神経の絞扼部位に関する解剖学的検討
坐骨神経由来の神経
坐骨神経から由来する膝関節周りの神経はNYSORAのサイトを参考に調べました。

- SMGN 上内側膝神経 上内側広筋動脈に続いて大腿骨幹の周りを進み、大内転筋と内側広筋の下の内側上顆の間を通過する
- SLGN 上外側膝神経 上外側膝動脈と一緒に外側広筋と外側上顆の間を通過するように大腿骨幹の周りを進む
- ILGN 下外側膝神経 腓骨頭の上にある下外側側副靭帯動脈に続いて外側側副靭帯の深部まで、脛骨外側上顆の周りを進む
- IMGN 下内側膝神経 脛骨内側上顆と側副靭帯の挿入の間の内側側副靭帯の下を水平に進む
とあります。ただし、坐骨神経と大腿神経のどちらに由来するかは議論あり とも記載されています。
参考ページ NYSORA 膝神経ブロック

このほかにも坐骨神経から分岐した総腓骨神経からの枝で前方に向かう線維は膝の外側面を、後方に向かう線維は膝の後外側面を支配するという報告もあります。
先ほどの図に総腓骨神経からの枝(膝の外側を支配)を追加したイラストです。(左下のRFNと書いてある部分)

閉鎖神経由来の神経
膝関節には閉鎖神経からの知覚枝が入り込んでいるとされていますが、その神経が実際にどのような走行で膝のどの部分に入っているのか明確な形で示している文献やサイトは多くありません。(単に私が見つけられなかっただけかもしれません)
閉鎖神経は前肢と後肢に分かれますが、どちらが膝に分布しているのか?という部分が若干不明瞭です。

坂本敦哉先生らの解剖学的研究では閉鎖神経の前肢から分岐し、伏在神経と併走して膝蓋骨下内方に達する閉鎖神経由来の神経が9例中1例認められたとのことです。
参考文献
坂本敦哉2015
股関節疾患患者に観られる
関連痛の発生機序解明にむけた
関節枝の分布状況に関する肉解剖学的検討
ただ、NYSORAのサイトで閉鎖神経ブロックについて記したこのページには閉鎖神経前肢後肢の記述があり、そこには『前肢は膝関節を神経支配しません』とあります。

また海外の文献ですが以下の報告内には膝の後面に、閉鎖神経後肢由来の神経線維が入り込んでいる図が示されています。図がとてもきれいで見やすいので是非一度見てみてください。
ほかのいくつかの文献中の記載にも閉鎖神経の後肢が最終的に膝関節に枝を出すというような記載があるものはチラホラ見かけます。
以上のことから考えると、閉鎖神経由来の神経線維は基本的には閉鎖神経の後肢由来で、それは主に膝関節後方を支配し、まれに前肢からも膝に至る関節枝が出ていることがあり、それは膝関節前内方の知覚に関与していると考えるのが妥当なのかなと感じます。
現時点でのまとめ(2025年1月)

膝関節の知覚を支配する神経は上記のように多くの神経があり、それぞれの神経がオーバーラップして支配していると推測されます。また、個体差の大きい部分でもあるようなので、ある症状に対して、ここが痛いから◯◯神経が絞扼されていると短絡的に決めつけることはできなそうです。
例としてランナーの方で膝蓋下脂肪体に痛みを訴えていらっしゃる方がいた時に、膝蓋下脂肪体をほぐして痛みが改善すればよいですが、痛みが改善しない時はこういった神経の絡みも考えて施術プログラムを組んでゆく必要がありそうです。

なぜここまで複雑な神経支配になっているのか考えてみますと、おそらく一つの神経が何らかの問題で機能しなくなったときの保険として、身体の方で準備されているのかな?と感じました。
ここまで自分がしらべたものを載せましたが、今後の勉強の状況により加筆修正するかもしれません。
追記
私が使っている解剖学のアプリには今回まとめた神経は載っていないものが多いです。また学生時代に使っていた解剖学の教科書にはほとんど載っていない内容です。
今回自分で調べてみて、本当に良い勉強になりましたし、医学はどんどんすすんでいるんだと改めて感じました。現状に満足することなく勉強を続ける必要があります。
おわり
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