仙腸関節の機能はまだ解明されていないことも多いようです。ただ、臨床的にさけては通れないため、今回自分用にまとめました。勉強中ですので随時更新です。
この記事を書いた人

長友 芳之(ナガトモ ヨシユキ)
柔道整復師・JSPO-AT
神奈川県横浜市鶴見区『ながとも接骨院』にて活動中。
※施術者としての個人的見解も若干含んだ内容ですので、お読みになる際はご留意ください。
普段は一般の方向けに健康情報を書いていますが、今回は自分の勉強記録として書いておりますので専門用語が多めです。
場所・形状

骨盤の中央にある仙骨と両側の腸骨の間の関節です。
関節面をそれぞれの骨を開いて現すとこのようなイラストになります。

関節の形状に特徴があり、すこし くの字 状に曲がっています。
このように仙腸関節がくの字に曲がっているのは人間だけのようで、馬などの仙腸関節はまっすぐだそうです。四足歩行の動物はそのようになっているようですね。
人間が二足歩行になった結果、仙腸関節がこのようになっているのだと思われます。

こちらのイラストは水平断面です。上が後方で下が前方です。
仙腸関節は靭帯領域と滑膜性の関節領域が分かれていて。後方・上部は靭帯領域、そして前方・下部は滑膜性の関節という構成になっています。この靭帯領域も含めた全体を仙腸関節として表現しています。

軟骨の部分に関しては興味深いのが、仙骨の方は硝子軟骨で、腸骨側は線維軟骨だとされています。
また、仙骨部分のほうが軟骨の厚さが厚く、腸骨側の関節面の軟骨の厚さは薄いというふうにされています。
恥骨結合との関係

仙腸関節を考えるうえで、前側にある恥骨結合は避けてとおれません。
仙腸関節がずれているという事は恥骨結合部分も何らかのストレスやずれが発生している可能性があります。臨床的に重要なつながりと言えます。
仙腸関節の靭帯 ligament

仙腸関節には多くの靭帯があります。文献などにより表現方法に差があったりしますがだいたい以下の通りです。
前仙腸靭帯ぜんせんちょうじんたい anterior sacroiliac ligament

仙腸関節の前側をおおう靭帯です。比較的薄い靭帯 と言う風に表記があることが多いです。
後仙腸靭帯こうせんちょうじんたい Posterior sacroiliac ligament

仙腸関節の後面を覆う靭帯で二つの繊維束に分かれるとされます。
ショートファイバー/短後仙腸靭帯/short posterior sacroiliac ligament
頭側の方についている線維束です。この部分の靭帯繊維は平行な繊維構造とされます。
ロングファイバー/長後仙腸靭帯/long posterior sacroiliac ligament
尾側についている線維束で、垂直な繊維方向であるとされます。
後述するカウンターニューテーションを制動する作用があるとされます。
参考文献:堤真大先生の研究
仙結節靭帯せんけっせつじんたい Sacrotuberous ligament

仙骨と坐骨結節を結ぶ靭帯束です。後述するニューテーションを制動します。
仙棘靭帯せんきょくじんたい sacrospinous ligament

坐骨棘と仙骨を結ぶ靭帯です。ニューテーションを制動する役割があります。
骨間仙腸靭帯こっかんせんちょうじんたい Interosseous sacroiliac ligament

①のところで述べた、後方の靭帯領域 にあたる靭帯です。
骨間仙腸靭帯は今までは人体最強の靭帯というふうに解説されることがありましたが、実際には非常に柔らかい繊維組織で脂肪組織を多く含んでいるという報告があります。
また、骨間仙腸靭帯の硬さは人によって個人差が大きいということも知られています。
体全体が柔らかい方は、脂肪組織に富んでいて柔らかくなっているのに対してカラダ全体が硬めの方は骨間仙腸靭帯の脂肪組織は少なく、繊維成分が多いとされます。
神経支配 innervation

様々な研究がありますが、まとめるとこんな感じに落ち着きました。ただ、カラダの神経の支配に関しては個人差がかなりあるようなので、あくまでも目安 として考えた方がよさそうです。
イラストは筆者が勉強のために作成したものですがあくまでもイメージです。
前方・腹側
L5を中心にS1~S2くらいまでの前肢が関与すると考えられますが、研究によってはL4~S3くらいまで関与するという内容もあったりで現在も検証が続いています。
後方・背側
L4からS4くらいの後肢外側枝が主に関与すると考えられます。
運動学 kinematics
ニューテーションとカウンターニューテーション

仙腸関節の動きは、仙骨に前後傾という名称ではなく、独特の名称で説明されることが多いです。
腸骨に対し、仙骨の頭側が前方に傾く動きを ニューテーション といいます。
腸骨に対し、仙骨の橈側が後方に傾く動きを カウンターニューテーション といいます。
ニューテーションは「仙骨前傾」カウンターニューテーションは「仙骨後傾」に近い概念ですが
単なる回転ではなく滑り・圧縮を伴う関節面での相対運動を含むため、あえてニューテーション・カウンターニューテーションという用語が用いられているようです。
このニューテーション・カウンターニューテーションは、左右で別々の動きをすることも多いです。
例えば歩行周期中で言うと、立脚側は基本的にニューテーション方向で、遊脚側はカウンターニューテーションの動き と言うように 同時に別々の動きが起こることで、仙腸関節の機能が成り立っていると考えられます。
インフレアとアウトフレア

仙骨に対し、腸骨の前方のASIS同士が近づくような動きを インフレア と表現します。この時、骨盤の後方のPSISは逆に開く動きになり、仙腸関節全体として考えると、緩む方向へ動く とされます。

仙骨に対し、腸骨の前方 ASISが外側に開く動きを アウトフレア と表現します。この時、後ろ側のPSISは閉じる方向に移動し、仙腸関節全体としては安定する とされます。
このインフレアとアウトフレアも、先ほどのニューテーション・カウンターニューテーションと同様に左右で別々の動きをすることがあります。
歩行周期で言えば、立脚側の腸骨はわずかにアウトフレア傾向で、遊脚側ではわずかにインフレア方向に行っているとする研究もあります。
そのほかの動き
上記の二方向の動きがメインの動きとされています。徒手療法の世界では、上記の動きの他に、アップスリップとダウンスリップという動きも使われています。
この動きは定量化や難しい為か、科学的な検証の対象にはあまりなっていませんが、実際の臨床ではこういった定量化しにくい動きの影響が少なからず関与している症例もあると思います。
今後の研究発展に期待です。
歩行動作時の挙動
佐中孝二先生のアンドロイドモデルを用いた二足歩行時の仙腸関節面の荷重伝達部位に関する研究によると、歩行中に仙腸関節の中で荷重伝達がなされる部分が変化する可能性があることが示唆されています。
1立脚初期では仙腸関節の後上部に荷重
2立脚中期には荷重が仙腸関節の中央に移動
3立脚後期には荷重は前下方

※アンドロイドモデルのため、実際の人の仙腸関節の荷重伝達を測定したものではないので、その点は注意が必要です。
編集後記
改めて記事をまとめる中で、自分でもいろいろ知らない用語が出てきたりして非常に勉強になりました。歩行時や運動時の関節の動きなどはこれからますます研究が進んでゆくことでしょう。
定期的に知識をアップデートしてゆきたく思います。

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