「ふくらはぎをマッサージしても、ストレッチをしても、走るとまた痛みが戻ってくる……」
陸上競技やランニングに励む選手の中で、そんなループに陥っている方はいませんか?
その痛みの原因は「筋肉」ではなく、「神経の通り道」にある可能性があります。
一般的に「坐骨神経痛」と聞くと、年配の方が腰から足にかけて痛むものというイメージが強いと思います。
しかし、現場で選手たちの体を見ていると、若い世代の現役アスリートにも、この神経の問題が原因で「ふくらはぎの痛み」を引き起こしているケースに多く遭遇します。
今回は、筋肉の問題と見間違われやすい「神経の滑走障害」について、実際にあった2つの症例をもとに解説します。
この記事を書いた人

長友 芳之(ナガトモ ヨシユキ)
柔道整復師・日本スポーツ協会アスレティックトレーナー
神奈川県横浜市鶴見区『ながとも接骨院』にて活動中。
※施術者としての個人的見解も含んだ内容ですので、お読みになる際はご留意ください。
参考文献
Diagnostic Approach to Lower Limb Entrapment Neuropathies: A Narrative Literature Review
Nicu Cătălin Drăghici et al .2023
Avneesh Chhabra et al, 2012
MR Neurography Findings of Soleal Sling Entrapment
Michael S Nirenberg et al.2025
An Investigation of Common Anatomical Sites of Tibial Nerve Compression in Persons With Clinical Findings of Tarsal Tunnel Syndrome
坐骨神経の構造

イラストはももウラの部分です。骨盤の後ろから出てきた神経が 坐骨神経 です。
坐骨神経は、途中で枝分かれをくりかえして足の方へ分布して、足の筋肉の運動を支配したり、感覚を支配しています。
膝ウラの少し上で、内側の脛骨神経と外側の総腓骨神経という神経に分かれます。
さらに総腓骨神経はふくらはぎの外側で浅腓骨神経と深腓骨神経にわかれる という複雑な分岐をくりかえしてゆきます。
この脛骨神経、総腓骨神経という坐骨神経から分かれた神経の部分に痛みが発生したとき、痛みの名称は「脛骨神経の痛み」とか、「腓骨神経に起きた痛み」と言うのが正しい表現なのだと思いますが、
一般的に 坐骨神経痛 という大きなくくりの中で説明されることが多いです。
ここからは当院で経験した、坐骨神経や、坐骨神経から派生したふくらはぎの脛骨神経に起きたと思われる痛みを2例ご紹介します。 ※情報公開に当たり患者様の承諾は得ています。
症例① 陸上短距離競技選手のふくらはぎの痛みが、坐骨神経由来の症状だったケース

学生陸上部の方で、種目は200メートルをメインにしています。
左足のふくらはぎに痛みを訴えてご来院になりました。
肉離れとの鑑別のためにストレッチの痛みを確認しますが、とくに問題ありません。
痛みの程度としては、『走れないほどの痛みでは無いが、疲労がたまってくると走るのがツラく感じる事がある』と言う事です。
硬さを見ると、左ふくらはぎの外側後面に硬さを感じます。
そのあたりの筋をほぐしてストレッチなどを行っても症状に変化がない為、すこし範囲を広げて、ふとももの後ろ側からおしりの方までほぐすようにしてみます。すると、左もも裏の中央外側部に硬い部分があります。

この部分で
【坐骨神経がハムストリングという太ももの後ろ側の筋と滑走障害を起こした事で、末梢であるふくらはぎの部分で痛みが発生した可能性があるのでは?】
と想定し、神経と筋を滑走させる手技を行ったところ、翌日の練習時には痛みがなくなりました。


この選手は3年ほど前に左足の小指を骨折された経験がありました。
足の指の動きを確認すると、右側にくらべ左側はうまく動かすことができません。
おそらく、こういったカラダのうまく使えない部分の影響や、200メートル種目でのトラックのカーブ動作などが積み重なり、症状につながったのではないか?と推察いたします。

症例② 陸上中距離選手に起きたふくらはぎの痛みが、脛骨神経由来の症状だったケース
専門種目は中距離(1500メートルから3000メートル)の学生ランナーです。
当院に来院する半年前から右のふくらはぎに痛みがあり、それをかばって走っているうちに、左側のふくらはぎも痛くて走れなくなってしまったとのことです。

当院来院前に、2軒の整形外科にてレントゲン・エコーやMRIなどの各種検査は済んでおり、半年かけたリハビリでも改善しないとのことで、知人の紹介でご来院になりました。
当院来院時は日常生活動作での痛みはなく、『ランニングで100メートルほど走った時に痛くなり、それ以上走ることができない』という事でした。
こちらの方は、整形外科での検査は済んでおり、筋肉に肉離れなどの症状がないことがはっきりしていましたので、お話を聞いてまず坐骨神経の症状を疑いました。
坐骨神経の中で圧迫されているポイントを探すと、臀部 ハムストリング部 ふくらはぎ部 の3か所が痛いことが分かりました。

順番に圧迫を取り除いてゆくと、【ハムストリング部 と ふくらはぎ部 を解したときの症状の改善具合が良かったので、この部分で神経が絞扼されている】 という見立てをしました。

臀部(おしり)の部分に関してはほぐしてもあまり変わりがなかったので、今回の痛みとは直接的な関係がないと感じます。
施術に関しては、硬い部分をほぐして柔らかくして、神経の動きを良くしてゆきます。
重要ポイントとして、ふくらはぎにヒラメ筋という筋肉があります。
このヒラメ筋の深部に脛骨神経が入ってゆく部分はヒラメ筋スリングと呼ばれ、もともと少し硬い腱のような部分があります。

ここの部分で神経が圧迫されることが多いとされていますので、この部分をマッサージのような手技でほぐす+足を動かして神経を動かしてゆきます。
さらに、足の親指を自分で深く曲げる動きをすると痛いこともわかりました。
親指を曲げる筋肉は長母趾屈筋という筋肉です。この筋肉は、ふくらはぎの深部で脛骨神経と接するような走行をしているため、この部分でも神経と筋肉の滑走性が悪くなっている可能性があると考えました。

長母指屈筋の部分を手で把握して、そのうえで足趾を最大限伸ばして最大限収縮させる という手技をくりかえし行います。

このような手技をおこない、自宅でも簡易的なセルフケアをお伝えしましたところ、最初の3回の施術で3000メートル(キロ6分ペース)まで走れるようになりました。
その後、キロ4分程度までペースを速めると痛みが出てくることが分かりましたが、これは半年間練習が十分にできていなかった状態で急にペースを上げすぎた影響もあると考え、段階的に強度を上げてゆくようにアドバイスしました。
そしてそこから5回ほどご通院いただき経過を観察したところ、キロ3分台のペースでも痛みが出てこなくなりました。現在も経過観察中ではありますが、おおむね良好な経過です。
このようにセルフケアと運動の強度、量の調整をしっかりと行う事で、来院から4週間後、無事に満足のいく運動強度まで回復され、目標としていた大会に出場することができました。

まとめ
このように、陸上種目やランニングの中でこういった症状が発生しているケースは、意外と多いのではないか?と感じています。
今回は脛骨神経に行った症状を取り上げていますが、他の部位で同じような神経の症状を疑われる方もいらっしゃいます。 神経が絞扼されたらカラダのどこでも痛みが発生するようです。
スポーツをしている方で、長く痛みに悩んでいる方はぜひご相談ください。
ながとも接骨院からのお知らせ
神奈川県横浜市鶴見区で接骨院をしています。
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