最近、施術中に「ベアフットシューズって体にいいんですか?」と患者さまから聞かれることが多くなってきました。
「クッション性の高すぎる靴を履き続けることで、足本来の筋肉や機能が失われているのではないか?」という疑問から、裸足(ベアフット)や「ワラーチ(薄い底のサンダル)」「ベアフットシューズ」で歩く・走るといったアプローチが一部で注目を浴びているのは確かです。
私自身、ベアフット歴5年の柔道整復師・トレーナーとして日常的に取り入れていますが、導入初期にはしっかりと足を痛めた苦い経験があります。
ベアフットは取り入れることで、今までとは違った体験をもたらしてくれると思っていますが、決して「万人向けの夢の健康法」ではないと考えています。
今回は、施術家目線で感じるベアフットのメリット・デメリットと、ベアフットを始める際に起こりうるトラブル・挫折せず長く続けるための「タイプ別導入アプローチ」を解説します。
この記事を書いた人

長友 芳之(ナガトモ ヨシユキ)
JSPO日本スポーツ協会認定アスレティックトレーナー・柔道整復師
神奈川県横浜市鶴見区『ながとも接骨院』にて活動中。
『ただ痛みを和らげるだけでなく、その方の職業・動作・競技特性を考慮して目標達成のお手伝いをさせていただいております。』
※科学的根拠に基づいた施術・情報発信を心がけていますが、
一部、施術者としての経験に基づいた見解も含みます。
参考文献
The foot core system: a new paradigm for understanding intrinsic foot muscle function
Patrick O McKeon et al.2014
ベアフット(裸足・ワラーチ・ベアフットシューズ)とは?

英語の「Barefoot(裸足)」に由来し、裸足やそれに近い極薄のシューズ、あるいはワラーチと呼ばれる最小限のサンダルで歩いたり走ったりすることを指します。
現代社会では裸足で過ごす機会がほとんどありません。

その結果、足の内部にある「足部内在筋(そくぶないざいきん)」や、地面の状況を感知するための足ウラの感覚センサーがサボりがちになっています。近年のスポーツ医学でも、この足本来の機能を呼び覚ます重要性が再評価されています。
私が考えるベアフットに取り組むメリット3つ
メリット① 足本来の機能(アーチの保持・衝撃吸収)の回復

ベアフットでは、今まで頼っていた靴のクッションに頼れないため、一歩踏み出すたびに足裏の小さな筋肉が自然と活動します。
メリット②身体の使い方・ランニング・ウォーキングフォームの改善について考えるようになる

靴のクッションに守られていると、かかとからドスンドスンと着地したり、無理やりフォアフットにしたりする 粗い歩き方・走り方 でも長時間動けてしまいます。
あまりよくない歩き方・走り方でもなんとかなってしまうので、カラダは修正しづらいのです。
ベアフットを続けると、カラダに負荷の少ないポイント(着足位置)に、負荷の少ない動かし方で自然と着足するようになる (そうしないと長く走ったり歩いたりできない) ため、結果として膝、股関節、足周りのトラブルなどが改善するケースが多く見られます。
また、ランナー以外の方でも、ベアフットでのやさしい足の使い方を身体で学ぶことで、カラダをいためにくい動き方とはどういうものなのか?を感覚的に理解できる利点があります。
私の知り合いでも、ランニングをされるわけではないけれど、ベアフット系のサンダルを履かれている方は多いです。
私自身がベアフットランニングをする中で研究した、着足時の足の位置・重心の位置による身体への影響を書いた記事はコチラです。※ランナー向けの記事です。
メリット③「足裏の解像度」が高まる

足裏にある無数の神経センサーが刺激され、地面の起伏や質感をダイレクトに感じることで、身体感覚(身体の解像度)が高まる独特の快適さがあります。
知っておくべきデメリットとリスク

とくにベアフットでランニングをされる方に多いのですが、最大のデメリットは、方法を間違えると強い痛みや怪我(疲労骨折や腱炎など)につながる点です。
生まれてから何十年もクッションで守られてきた足を、急に過酷な環境に晒せば、関節や筋肉が悲鳴を上げるのは当然です。ベアフットへの移行とは、「自分の身体の動きや構造を少しずつ適応させていくプロセス」そのものです。
また、すでに外反母趾が高度に進んでいるなど関節の変形が強い方や、関節リウマチなど関節の持病をお持ちの方には適さない場合もあります。
すべての方に万能な健康法ではないことを念頭においておきましょう。
ベアフット導入初期にあるよくある間違い
ベアフットで走ると自然とフォアフットの走り方になる。という話を聞いたことがある方も多いかもしれません。これは半分合っていて半分間違っていると考えています。
フォアフットになるか、かかとで着地するかどうかというのは、その時の移動するスピードに合わせて自然と変化してくるものだと思います。
なので歩いているときは、ベアフットでもかかとから着地して歩きますし、走っているときも、だんだんとスピードが上がってくると、フラットの着地のような形になってきて、さらにスピードがかなり速くなってくると、フォアフットのような形になってくるというのが自然で、かつ正解な流れなんだと思います。
私も導入初期はベアフット=フォアフットだと勘違いしていましたので。歩くときもフォアフットで歩こうとしたことがありますが、カラダが痛くなるだけでした。
【タイプ別】長く続けるための導入ステップ例
ここでは、3つのタイプに分けて導入のアプローチを考えてみました。
運動習慣がない方・足に軽度の変形がある方など

アプローチ:まずは「家の中での裸足生活」から始める
いきなり外でベアフットシューズやワラーチを履いて走ると、ほぼ確実に足を痛めて挫折します。
まずは室内で裸足で歩く時間を増やし、足裏に刺激を与えることから慣らしていきましょう。過去に骨折や脱臼で関節の形が大きく変化している方は、無理に行わない判断も大切です。
そのうえで、ちょっとしたコンビニ外出などでベアフットシューズを取り入れたりして、すこしずつ慣らしてゆくとよいでしょう。
普段から靴を履いて運動している方

アプローチ:「ウォーキング」から開始し、痛みの強度で管理する
体力に自信があるスポーツマンでも、足裏の内在筋は驚くほど華奢(弱っている)なケースが多々あります。
体力に任せていきなり走ると、アキレス腱まわりや足底筋膜、関節、スネの内側などを痛めます(実は私も初期にここを痛めました)。
ルール: まずは10分〜20分の「ウォーキング」から始めます。
判断基準: 目安として、10段階中「4」以上の痛みが出たら即中止し、1週間程度は普通のシューズに戻して休ませます。
痛みが引いたら再び短い距離から再開し、少しずつ筋力と組織の耐久性を高めていきましょう。
(※ふくらはぎ周りの筋肉の軽い張り・筋肉痛は許容できますが、関節の痛みやアキレス腱などの「腱付着部」の痛む場合は絶対に無理をしてはいけません)
上記のようにして少し慣れてきたら、500メートル程度のゆっくりジョグから始めてみるとよいでしょう。
普段から裸足での運動に慣れている方 ヨガ・ピラティスなど
普段から足裏のセンサーが働いているためスムーズに適応しやすいタイプです。
ウォーキング程度であれば結構普通に適応できると思いますので、様子を見ながら進めてゆくとよいでしょう。
ランニングをしたい場合は、ウォーキングとは衝撃の大きさが違うため、様子を見ながら進めましょう。
どうしても導入初期は裸足感覚が楽しくて距離を伸ばしたりしがちですが、しっかりとレストを取ってゆくことが大切です。
ランニング中は少なからず神経の興奮などで、痛みを感じづらくなっていたりします。
ランニング中は走れてしまっても、終わった後に足の靭帯に炎症が出たり、ひどい場合は足の骨に疲労骨折を起こしてしまうケースがあります。
あせらず1〜2年スパンで段階的に距離を伸ばしましょう。
足のつき方、振り出し方、体重の乗せ方、タイミング そういったものを少しずつ調整して、カラダに負担の少ない歩き方・走り方を追求していって下さい。
まとめ

ベアフットやワラーチは、足の機能を取り戻すための非常に有効なツールですが、関節の持病を持っていたり、変形がすでにある方には合わない など万人に合うものではないと思います。
医療機関で「ベアフットシューズでウォーキングやランニングをして足が痛い」と相談しても「クッション性の高い靴を履いてください」と言われて終わることがほとんどです。
なので、自分の身体に向き合い、「致命的な怪我にならない範囲で少しずつ変化を楽しむ」というプロセス自体を楽しめる方にとって、ベアフットはカラダをより深く理解するための良い方法となります。
もし「合わないな」と感じたら、無理をせず通常のシューズに戻して運動を継続してください。
当院では、ベアフット導入によるお身体のトラブルや、安全なステップアップのための足部評価も行っていますので、お気軽にご相談ください。



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