【臨床ノート】腰・脇腹・股関節のしつこい痛みに「腸骨下腹神経(外側皮枝)」の締め付けが関与していた症例

セルフケア
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長友芳之

長友 芳之(ナガトモ ヨシユキ)

JSPO日本スポーツ協会認定アスレティックトレーナー・柔道整復師
神奈川県横浜市鶴見区『ながとも接骨院』にて活動中。
『ただ痛みを和らげるだけでなく、その方の職業・動作・競技特性を考慮して目標達成のお手伝いをさせていただいております。』

※本記事は、論文等にもとづいた科学的エビデンスを提示するものではなく「日々多くの患者様を診させていただく中での、個人の臨床推論」に基づく内容となります。
その点をご理解の上、参考にしていただければ幸いです。

「腰痛」と一言で言っても、その原因や痛みの現れ方は本当に様々です。
10人の腰痛の方がいらっしゃれば、10通りの腰痛があると言っても過言ではありません。

代表的なもので言えば、椎間板ついかんばんヘルニア、椎間関節性ついかんかんせつせいの腰痛、筋・筋膜性腰痛きんきんまくせいようつう仙腸関節障害せんちょうかんせつしょうがい、あるいは「上・中臀皮神経障害じょう・ちゅうでんぴしんけいしょうがい」などが知られています。

長友 芳之
長友 芳之

以前書いた腰痛の分類についての記事はコチラです↓

https://ameblo.jp/nagatomo-sekkotu/entry-12716677641.html?frm=theme

今回ご紹介するのは、一般的にはあまり聞き慣れない「腸骨下腹神経(ちょうこつかふくしんけい)」という神経が、患者様のしつこい腰〜脇腹の痛みに関与していたと思われるケースです。

「腸骨下腹神経(ちょうこつかふくしんけい)」とはどんな神経?

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腸骨下腹神経とは、5つある腰椎の上の方、第1腰神経だいいちようしんけい(L1)から始まる神経です。

腰の骨から出た後、お腹のインナーマッスルの間(腹横筋ふくおうきん内斜腹筋ないふくしゃきんの間)をくぐり抜けるようにして、前下方の脇腹〜下腹部、そして鼠径部そけいぶ(脚の付け根)へと伸びていきます。

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途中で、1本分岐する神経があります。

「外側皮枝(がいそくひし)」と呼ばれる枝です。
この外側皮枝は、骨盤のへり(腸骨稜ちょうこつりょう)を越えて、お尻の横〜上部(上臀部じょうでんぶ)の皮膚の感覚を支配しています。

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つまり、腹筋群の間でこの神経が締め付けられたり(絞扼:こうやく)、周囲の筋膜が固まって引きつれたりすると、腰の脇からお尻の横、さらには前側の鼠径部にかけた広範囲に痛みや違和感が生じることになります。

臨床でこういった症状で悩んでいる人は、意外と多いです。

【症例紹介】50代男性:トレーニング習慣のある方の「動けないほどの腰・股関節痛」

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日頃からジム等でトレーニングや運動をされている50代の男性患者さまです。

以前に腰痛(椎間板ヘルニア)を経験されたことがあり、それ以来、ご自身でストレッチや筋トレを行って予防に努めていました。

そのおかげか、ここ10年ほどは問題なく過ごしていたそうです。

しかし最近、「立ち仕事」の時間が増えたことで、再び腰がジワジワと痛み始め、次第に悪化。ご来院時には「痛くてまともに歩けない、動けない」という状態でした。

当院来院前に、整形外科を受診され、「レントゲン上は以前ヘルニアを起こした椎間板がすこしうすくなっているけれど問題ない」 という診断をしてもらっていました。

そして、湿布と薬が処方されておりました。

当院でさらに詳細な観察をすると以下のような形です。

  • 痛みの部位: 単なる腰の中央ではなく、「脇腹のあたりからお尻の上部・横、そして前側の鼠径部にかけて」痛む。
  • 痛みの出る姿勢:前屈みの姿勢で痛い また、歩いて荷重をかけたときに激痛がある
  • 痛みの出る時間:朝がツラく、長時間座っていたあとなどもつらい、立ちっぱなしもつらい
  • 困っていること:仕事で長時間立っているのがツラい
  • 楽な体勢:寝ている時

一般的な関節(椎間関節や仙腸関節)の病変というよりは、筋・筋膜の緊張や神経の絞扼こうやく(圧迫)が疑われました。

【施術のアプローチと反応】

以下のように施術をすすめました。

  1. 腰〜背中の筋膜リリース: 周囲の緊張をほぐしてみるが、大きな変化なし。
  2. 腸腰筋ちょうようきんへのアプローチ: 股関節周りのインナーマッスルの機能低下を疑って施術を行うが、こちらも効果が薄い。
  3. 腸骨下腹神経ちょうこつかふくしんけいの走行に沿った施術: お腹の側面(腹横筋・内斜腹筋の滑走性)および腸骨下腹神経のルートをターゲットに筋肉・筋膜のひきつれを解消するアプローチを実施。

→結果、3つ目の腸骨下腹神経への施術を行った直後から劇的に動きが改善し、痛みが大幅に軽減いたしました。

この経過から、今回のケースは「腹筋のインナーマッスルの間の筋膜が固くなり、そこを通る腸骨下腹神経(および外側皮枝)が締め付けられて起きていた痛みの可能性が高い」と推測できます。

改善・再発防止への取り組み:「呼吸」と「側屈(横のストレッチ)」を中心に進める

腸骨下腹神経は「お腹の深層の筋肉(腹筋群)」の間を縫うように通っているため、お腹まわりの柔軟性と滑走性(筋肉同士のスムーズな動き)を取り戻すことが改善のキーポイントになります。

院での整体施術に加え、以下のようなセルフケア・再発防止を御伝えしました。

1. 腹部全体を使った呼吸法

トレーニングを日常的に頑張っている男性に多いのが、「胸(肋骨)はよく動くけれど、お腹の深い部分を使った呼吸ができていない」というパターンです。

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図のように、胸やおなか全体を風船のように膨らませて膨張・収縮させる正しい呼吸を行うだけで、お腹の深層筋が優しく刺激され、神経の絞扼が解けやすくなります。

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当院では、慢性的な腰痛の方にはすべての方に呼吸エクササイズを行っていただくようにしています。詳しくは下記リンクからご覧ください。

2. 脇腹の「横方向(側屈)」の可動域づくり

多くの方は普段のストレッチで「前後のうごき(屈伸)」や「ひねり(回旋)」は行いますが、「体を横に倒す(側屈)」ストレッチは行わないことが多いです。

この患者様も例外なく脇腹がカチカチに固まっていたため、前後・ひねりに加えて「横方向の可動域」を出すストレッチを念入りに一緒に行っていきました。

その結果、現在ではすっかり痛みも改善され、日常生活や運動へ無事復帰されています。

まとめ:見落とされがちな神経痛と柔軟な臨床思考

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今回ご紹介した「腸骨下腹神経」が支配しているエリア(お尻の横や脇腹)は、実は他の有名な神経(上臀皮神経や中臀皮神経など)の支配域とも大きく重なっています。

そのため、「ここが痛い=絶対に腸骨下腹神経だ」と断定できるわけではありません。

しかし、整形外科や一般的な接骨院で「異常なし」と言われたり、背中のマッサージなどで改善しない腰痛の裏には、こうした「ちょっとマイナーな神経の締め付け」が潜んでいるケースがあるということは知っておいて損はありません。

当院では、患者様一人ひとりの現在に至る痛みのプロセスや、お仕事・日常生活の姿勢、身体の状態を総合的に見てから原因を推論し、早期改善を目指しております。

どこに行っても良くならない腰痛でお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。

長友芳之
長友芳之

※過去に他の接骨院や整形外科等で同じ部位(腰など)に対して保険診療を受けられている場合、制度上、当院では健康保険を重複して使用することができません。

その場合は「自費施術」での対応となります。自費施術の料金やシステムにつきましては、当院ウェブサイトをご確認ください。以下のリンクからご覧いただけます。

【当院の案内・各種リンク】

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